土地ブローカーとなりつつ

      僧の冷奴

(三島龍澤寺 中川 宋淵老大師)

 久し振りに三島の龍沢寺の先師、宗忠老大師の夢を見た。
長い間、参禅してお世話になった、かけがえのないご老師である。
 過日、高知の長谷ちょうこく寺の小林玄徹和尚さまから頂いた手紙に宗忠老大師の33回忌のことが書かれていたのが夢の始まりである。
 龍沢寺との縁は、先の「ふくろう通信」で触れたように、銀座のうなぎ屋「竹葉亭」の先代別府信雄さんである。不思議なご縁に導かれて、宗忠老大師に正見出来たのは、昭和49年3月のことである。
 参禅を始めて何年か経ったある日、入制の大接心を終えて、帰京のご挨拶のため陰寮に伺った折、老大師から次のようなお話をお聞きした。
 「師匠の玄峰老大師が口癖の様に話していたお言葉がある。人間は早く出世することを考えてはいけない。若い時には、なるべく人の下で働き、人を助け、人のために働くことだ。花も咲かない寒い間に、木の根に肥料をやるように、人生には、なによりも根肥ねこえが大切じゃ。
四十より五十、五十よりも六十と、年をとるに従って人に慕われ、人の役に立つ人間になり、むしろ死んでから人に慕われ、人を教えていくような人間にならなければいかん!そのためには出世を急いではいけないよ。知識と徳をじっくり養っておくことが大切じゃ。」
 それは、小さな成功で、慢心していた私の心を見透かすように諭された有難いご説法であった。36歳の春の衝撃的な教えであった。
 もとより人に慕われ、人を教えて徳を養うことには、遠い人間になってしまった己に、ほぞ・・をかむ思いであるが、その後、老大師の心を常に心として、大切にしながら人との出会をことさら大切にして来た45年間であった。
 人は一人で生きていくことはできない。家族はもとより、多くの人々のお蔭をもって日々暮らすことが出来るのだ。
 ところで、人との付き合いには、黄金の法則があると「日本の礼儀作法」の著者竹田恒泰さんに教えて頂いた。以下に著者の言葉をそのまま引用して、ご紹介させて頂きます。
 付き合いで最も大切なことは、人間関係の入り口と出口を間違えてはいけない。具体的には、人に頼み事をするときには、かならずその人を紹介してくれた人を通して頼むこと、これが「話の入り口」である。そして、人に頼みごとをしたら、その結果をその紹介者に必ず報告すること、これが「話の出口」である。
 たったこれだけかと思う人もいるだろう。だが「たったこれだけのこと」が、人付き合いの黄金法則である。これをコツコツと続ければ、必ず良い人脈を築くことが出来る。
 次に、人付き合いで二番目に重要なことは、断る時の作法が大切である。
 人との付き合いは、物事を依頼したり依頼されたりの繰り返しである。
 依頼された事を引き受けるときは良いが、お断りする時には、どのような作法でお断りするかは、依頼主とのその後の関係を大きく左右する。
では、お断りするときは、どのような作法でお断りするのが良いか。
 著者は、二十代前半の頃、伊藤忠商事会長、特別顧問を歴任なさった瀬島龍三様から教えて頂いたという。
「引き受けるときは電話で伝えればよいが、断る時は直接会いに行って、相手の目をみて伝えろ」というのが瀬島式お断りの作法である。(以上は日本の礼儀作法 竹田恒泰氏 マガジンハウス発行より。引用)
 手土産を持って断りの挨拶に来られたら確かに悪い印象は残らない。
 昨今の世の中を眺めると人間関係が、無機質になってきた為か、心を添えた心配りの出来る人が、少なくなって来たような気がするのである。
 誰もがひとりで生まれ、一人で成長して、ひとりで一人前になったような気持ちでいるのか、ひとさまに対する思いやりのこころ、恩を感ずる気持ちが欠けてきたような気がするのである。
 我々も充分心に留めて行かなくてはけない。
 「日本の礼儀作法」を読んで、改めて自らの心を大いに反省しているところである。

合掌

米山 昌英